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恐怖と絶望


「閣下!」

リリエルはイザマーレに抱きついた


「…遅くなって申し訳ありません!お許しください……」


「無事でいてくれたんだな?

あの時のように、吾輩のいない所で命を落とすようなことはせずに…

魂の眠る花園に探しに行くのは手間がかかるのでな……」

髪を撫でながらリリエルを見つめるイザマーレの瞳は穏やかだった。


「おまけに相変わらず陛下にあのような真似を……

大魔王陛下を脅かす無鉄砲な女は、お前くらいだろうな」


リリエルはイザマーレを見つめ返す。

「…閣下…私は…閣下の妻だったのですね?お話を聞かせてくれませんか?」

「…リリエル」


イザマーレは迷った…だがリリエルはイザマーレに微笑みかける。

「大丈夫です、リリエルは全て受け止めます」


「…分かった。覚悟はいいか?」

「はい」


「吾輩の目を見ろ。目を反らすな」

リリエルはイザマーレの目を見つめた。

イザマーレの澄んだ瞳に吸い込まれる感覚があった

そのまま気を失い、眠りについた…



 

ダンケルを庇い、イザマーレはゼウスに囚われた。

ゼウスは、傷だらけで鎖に繋がれているイザマーレを魔界の悪魔達に見せ付けた。

Lilyelはイザマーレが囚われた事を知り、民衆の中に紛れ駆けつけた…

Lilyelに気付いたイザマーレの声が心に届く。


『何故来たのだ!そこから動くな!絶対に来るな!

吾輩は大丈夫だ。何があってもこっちには来るな!良いな?

絶対に奴らに見つかるな!』


Lilyelは愕然と見てるしかなかった


「こいつを二度と出て来れないヨッツンハイムに封じ込める!

先代が消滅し新たな大魔王が即位してもこいつが居なけりゃ

魔界が崩壊するのも時間の問題だな!」

ゼウスが高らかに笑って言い放った。


Lilyelは震えが止まらず…涙でイザマーレも見えなくなっていた。


目の前で消えていくイザマーレ

(嫌です!私を置いていかないで!………)


場面が変わり、探し求めたイザマーレを見つける


「イザマーレ様!!!」


傷だらけになりながら、抱きしめてくれるイザマーレ。優しく口唇を合わせた…

だか、イザマーレに知らない名前を呼ばれる


「Kyliel……」

「!?」「Kyliel…」

「…嫌…私はそんな名前ではありません…嫌っ…………!!」

思わず頭を抱え狼狽えるリリエル


場面が真っ暗になる




 

「!?」

手を縛り上げられ、辱められている

イザマーレだと思っていた相手が、憎いゼウスの顔に変わる

「!!」


「…い、嫌!イザマーレ様は何処に…?!」

「イザマーレには勿体ない女だ。お前は私の物…」


何度も舌で汚され、陵辱される

繰り返し………


毎日のように嫌がるLilyelを嘲笑い縛り上げ、ゼウスは暴虐の限りを尽くす


「あのイザマーレにはもったいない女だ…神の洗礼を受け入れろ…もう…私の物だ…」

「い、嫌!……!助けて…イザマーレ様…」

泣きながら抵抗し叫んだ


「彼奴は今頃さぞかし指を咥えて悔しがってるだろうな…

愛する妻を私に奪われて…イザマーレに届くように聞かせてやれ…

お前がよがってる声をな!」


「嫌!いやあああああああああああああああっ!!!!!!!!!!!」


半狂乱になり、死に物狂いでゼウスを殺そうとするが、再び手を縛り上げられる

処刑台に磔にされたLilyel

「!!!」


公衆の前で犯され、嘲笑され、罵倒されながら、最期に肌を切り裂かれる

「!!!嫌!!嫌あああああっ!!!!!!!」


気を失い、暗転していく

真っ暗闇の中に一筋の光

無我夢中で追いすがるが消えていく


嫌!嫌…………!!!




 

「…っ!!!!!!」

絶望と恐怖のあまり飛び起きる

震えが止まらない

だが気がつくと、リリエルはイザマーレに抱きしめられていた。

強く、優しいぬくもり。あの日からずっとイザマーレに守られていたのだ。


「…イザマーレ閣下………っ」

「…………」


これまで見たことがないような、

辛そうな表情を浮かべるイザマーレに、心がえぐられる


「…この事だったのですね。閣下が迷われていた理由は……」


イザマーレはLilyelの行動をヨッツンハイムの中で透視していた。

自身を助ける為に契約書まで書かされ、ゼウスにもてあそばれ…

最期には処刑されたことを…

愛する妻がゼウスの手に犯され、処刑された忌まわしい記憶は、

イザマーレにとっても辛く耐え難いものだった………


イザマーレは震えるリリエルを抱きしめる


あの時は、傷ついたLilyelを慰める事すらかなわなかった

そのことが、どれほど吾輩の心を凍らせたか……


哀しみと憎悪の感情に覆いつくされ、

リリエルが愛を失うことを、最も恐れていたのだ


そのためなら、どんな犠牲も、どんな代償も受け入れる覚悟だった


リリエルはイザマーレの胸の中で泣いた



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