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操り糸の呪い


人間界にエマが住むようになってから数ヶ月…


久々にエマが衣装魔の仕事でリリエルの元へ来ていた。

それを知らずにダイヤと裕子は、

リリエルと会う約束でイザマーレの屋敷に魔法陣にて姿を現した。


「いらっしゃい!」

リリエルもニコニコで出迎える。


「お招き有難うです!」

ダイヤはリリエルに抱きつき、キャーキャー言っている。

裕子も照れながらダイヤの次に抱きついてニコニコしていた




 

ダイヤは笑顔で見ていたが

ふと何かに気がつき、一瞬表情を曇らせる


「閣下、リリエル様、御用意が出来ました」


ダイヤ達の後ろから声が掛かった。


ダイヤは確信して小さくため息を付いた。

エマが屋敷に居たことを…

そしてまた、再び『出戻り后』発言を思い出していた。


「ありがとう、エマ。お茶を用意してくれたので、

ダイヤ様達も行きましょ!」


リリエルはニコニコして歩きだした。


裕子はリリエルと並んで話をしながら部屋に入っていった。


ダイヤもエマに会釈して、リリエルの後に続いて歩きだした。


「ダイヤさん…」

エマから声がかかる。


立ち止まり振り返った

「はい?なんでしょう?」

塩対応のダイヤ。


「…この前は大変失礼な事を申しあげてしまい…ごめんなさい」

エマは頭を下げた


「……」

ダイヤは戸惑ってエマの顔を見つめている


「ダイヤさんに告げた私の発言は、許される事ではないと分かってます

…心から反省しています…本当に申し訳ありませんでした」


エマは本気で謝っていた。静けさが広がる…




 

「…あの言葉は本当にキツかったわ…

でも、もう良いよ。分かってくれれば…。

エマさんから聞けて良かった(^_^)エマさんも一緒にお茶しよう!」


エマと一緒に、ダイヤはリリエルの居る部屋へと向かった


一連の流れを、素知らぬフリで見守っていたイザマーレとリリエル。


イザマーレはリリエルの髪を撫で、微笑みかける

リリエルも嬉しそうに、微笑んで見つめていた


2魔の様子に、真相が分かった裕子は、

腑に落ちた表情を浮かべていた




 

その後は穏やかに、エマの淹れたお茶を飲みながら談笑していた


しばらくすると、エマが思い出したように語り出した


「私は元々、ヴィオラ侯爵の邸宅の隅で咲いていた

スミレの花でした。」


「…やはり、そうだったのね。」

リリエルは、静かに見つめて、先を促す


「女として生まれ変わった時から

侯爵に従う事を命じられて生きてきました。そもそも……

最初から侯爵の魔術に取り込まれてたいたのでしょう」


当時の事を思い返し、震えて俯くエマの手を

リリエルは優しく握りしめる


「リリエル様と閣下の愛に触れて、

操り糸の呪縛から切れたのに、生きていられるのは奇蹟です。

リリエル様には……感謝し尽くしてもしきれません。」


(…なるほどな。リリエルの愛の力が、操り糸の呪い返しを

引き起こしていたか…)


イザマーレは穏やかにリリエルを見つめていた




 

エマの話は続いていた


「リリエル様の髪であんな事になるなんて、思ってなかったんです。

これからは、身に着けているものは全て、厳重に管理しないと…

閣下、リリエル様を一名でお買い物に行かせるなんて危険ですよ」


「あ…、うん、実はね…」

聞いていたリリエルは、照れたように俯く


「お前たちの企みは、全て最初から分かっていた。

リリエルには、お前たちをおびき寄せるため、囮調査をさせただけだ」


「…!」


イザマーレの衝撃の告白に、愕然とするエマとダイヤ…


「リリエルは吾輩の妻だが、公設秘書として、

つねに魔界の状況を把握する必要がある。

直接、悪魔たちから話を聞くことで

どんな小さな災いの種も見逃さない。

市場で一魔歩きを許しているのは、

それこそが重要な任務だからだ」


一方、事件の日の事を思い出していた裕子


「…そういえば…あの時も、

実はすぐ後ろに、閣下いらっしゃったんですよね」


「そうだ。あの時だけではない。丸太小屋にいる間も

常にリリエルの傍に居たぞ。姿は消していたけどな♪」


不敵な笑みを浮かべるイザマーレに、エマは苦笑い。


だが、ダイヤは複雑な心境だった


(囮調査なんて危ないことをリリエル様にさせるなんて!

私にやらせな!…言える立場ではないけど…)


声にはせず、俯くダイヤ


(…あらあら、ダイヤ様ったら…)

(リリエルの事になると暴走するのは、相変わらずだな(笑))


イザマーレとリリエルは、テレパシーで会話をしていた


裕子はじっと目を細め、ダイヤを見つめていた





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