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明日なき花


愛を信じないはずの悪魔に愛を囁かれ、何度も身体を重ねながら、

リリエルはイザマーレと出会ったこれまでを思い返していた

ただ、傍にいたいと願い、その我儘に応え続けてくれた日々……

真実の愛に出会えば、重荷になるのは自分自身だと誰よりも分かっていた


すべて、願い続けた事……


それが叶えられた今、決断をしなければならない。

なんとか笑顔でお伝えしたいけれど……


……


イザマーレはリリエルを人間界に帰す時間まで、長い長い夜を重ね続けた。

「閣下、素敵な時間をありがとうございました。」

イザマーレに抱きしめられながら、いつものように微笑むリリエル。

「ああ、明日の生放送中は髪に座っていろよ。また迎えに行くから」


「…閣下。リリエルはいつまでも閣下のことをお慕いしております。

いつでもどこでも、閣下のことを愛し続けます。それで…お願いがあるのですが」



 

「?…今度はなんだ?」

いつものように髪を撫でながら先を促すイザマーレ。


涙をなんとか堪え、笑顔で見つめるリリエル。

「髪から降ろしていただきたいのです」

「!!!」

衝撃で固まるイザマーレ


「閣下にとって、本当に大切なのはダイヤ様です。

ダイヤ様への愛に気がつかれたこと、自分の事のように嬉しいのです。

むしろ私のような人間が、我儘で閣下のお傍に居続けた事で

ダイヤ様にも辛い思いをさせてしまいました。

私はもうすでに、閣下にたくさん愛されました。愛のお言葉まで…

それだけで十分です。地上に降りても、閣下を思いながら生きていけます」


「……」


「長い間、本当にありがとうございました。

ダイヤ様を大切になさってくださいね」


お辞儀をして顔を下げた瞬間、涙がこぼれそうになり

俯きながら部屋を出ようとしたその時、イザマーレに腕をつかまれる


「……!…閣下…お離しください。お願いです」

「…リリエル。明日、迎えに行くから。またデートしような」

つかんだ手を離さず、優しく伝えるイザマーレ。


「!…っですから、もう…」

言いかけたリリエルを強く抱きしめる。


「たとえお前のおねだりでも、それだけは応じられない。

永遠に傍にいると誓っただろう。吾輩から逃げられると思うな。」


「そ!そんな…お願いっ…」

最後まで言わせず、口唇を塞ぐ。そのままリリエルを人間界に送り届けた。


「…お前に話すべきことがある。明日、必ず迎えに行くから待っていろ」

そう言い残して、立ち去った。



 

 



翌日、イザマーレは収録の後、リリエルを迎えに行くが、

リリエルはすでに立ち去った後だった。

誰もいない部屋で愕然とするイザマーレを、ウエスターレンが強く抱きしめる。

「…大丈夫だ、イザマーレ。

お前を悲しませたまま、平気でいられるリリエルではない。

そうだろ?俺が必ず見つけ出してやるから……」


「ウエスターレンっ…まるであの日のようだ…吾輩がヨッツンハイムから……っ

あれほどの喪失感を再び味わう事になるとは……」


「心配するな。お前の事だ、すぐに取り戻せるさ。」


涙を流すイザマーレの顎に手を添え、優しくキスをする

「…ウエスターレン…」

「お前にまだ伝えていなかったな。

これからはお前と、お前の大事なリリエルのことも

俺に守らせてくれ…もう二度と、お前を孤独にはさせない

約束するから…な?…」


見つめるウエスターレンの瞳に映る、自分の姿を確認しながら

ウエスターレンの首に腕を回すイザマーレ…



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