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最悪拷問官の日常

2022年5月5日公開作品

※SNSやブログ等への転載は固くお断りします。



違和感

漠然とした違和感…


音楽・芸能・スポーツ


どの分野でも、最高峰で光り輝く当事者たちの表現は皆、一様に素晴らしい


背景にある並大抵ではない努力と忍耐を乗り越えた先にある

ほんの一握りの栄光と、多くの挫折


その舞台裏にもスポットを当て、大人たちはそのドラマに酔いしれる


やがてそれは、誰からも称賛され、望ましい姿と型にはめられ

身動きできず、窒息寸前にある当事者たちの悲痛な叫びなど

誰も見向きもしない


それは…本当に望ましい姿なのだろうか…


栄光を掴み取った一握りの幸運の持ち主でさえ、その表情に個性がない

強く光を宿しているかのように見えるその瞳は、

個を失くしたマリオネットにしか見えない


この世に、素晴らしい芸術が花開くことは、誠に望ましい


だがそれは、誠の自由を掲げる悪魔が司る芸事の姿とは程遠い


ステレオタイプな操り人形が、無責任に量産されている

厄介事から目を背け、ただ安心したいだけの、神の分子により…






 

今日も一魔、地獄の沙汰を受け、

セルダの前に連行された悪魔が、泥のような濁った目で

力なく横たわっていた


「…ご苦労さん。もう、出てきていいよ」


セルダの短い言葉を受け、横たわる身体からオーラが抜けていく


「…なんだか、深刻な事になってるじゃんね…」


今、人間たちが求める、箱型のドラマにおいて、必要不可欠なのは

カリスマ性のあるリーダーだ


リーダーの魅力に虜にされ、周囲を動かし

彼らにもたらされた評価の恩恵を受け、甘い汁を吸う取り巻きにより

似たり寄ったりの筋書きが量産されていく


人間技とは思えない、魅力を兼ね備えるリーダー

実体は悪魔が入り込み、適度にコントロールさせているのだ

そして、集められた未来のたまごが雁字搦めとなり

溺死寸前の赤信号が灯された時、魂の引導を告げ

リーダーを表舞台から退場させる。

それが、潜伏した悪魔に課せられた重要な任務だ


「…このところ、多いね。」


骸から抜け出した悪魔は、無言のまま会釈をして、部屋を出て行く


「俺らの時代も、矛盾だらけな世界ではあったけど…」

手元にある書類を見ながら、げんなりとため息をつく


「うわ~、信じらんねー。こんなんじゃ、反抗する気力さえ奪われるっての…」


「それが、奴らがひた隠しにする本音だからな」



 

「!」


突然声がして、姿を現した悪魔を見遣り、立ち上がってアッサムを淹れる


「…トカゲの尻尾切りか。地道な作業だが、続けていくしかないな」


続けて現れたもう一魔は、デスクに置かれた書類を見て

やれやれとため息をついている


「そういう事。どうしたの?珍しくお揃いで…

この件の報告ついでに、閣下に会いに行く予定ではあったけど…」


ティーカップを差し出しながら、にこやかに笑うセルダ


「ああ、今日はもう、良い時間だろ?

たまには一緒に食事でもしようかと思ってな♪」


「あ、お前これ、何だよ…リリエルの娘が通う高校じゃねーか

…はは~ん、なるほどな♪」


ティーカップに口をつけながら、穏やかに微笑むイザマーレの横で

手元の書類を覗き込み、呆れ顔のウエスターレン


「何を言ってるのだ、ウエスターレン。引導を宣告したのは、潜伏させた

セルダの部下による判断だ。吾輩に出来るのは、

リストを改竄して順番を入れ替えるくらいが関の山だからな♪」


「…だと思ったよ(苦笑)なんか、見覚えのある学校だったからね。

“賛同致しかねます”って突っぱねても良かったんだけどさ、

結構、状況は深刻だったからね。

ここは、副大魔王閣下の千里眼ってことで、大目に見る事にした(笑)」


セルダの言葉にフッと笑うイザマーレ

「さ、そろそろ行くぞ。今日はお前の発生日だろ?セルダ」

「…あ、忘れてた。そっか、それで(笑)」



FROM HELL WITH LOVE


平原に大挙して押し寄せた低級魔たちが

高まる鼓動に突き動かされ、拳を上げ、

その瞬間を待ちわびている


一転して、素朴で、飾らない素直な美旋律が

心の扉を開放させていく


その心地良さに、居合わせた森羅万象の意思が

一様に酔いしれ、揺らがない一体感を生み出していく


やがて、大河となり贅沢な音の洪水に

全てを飲み込み押し流していく

その渦に全てを巻き込まみながら

溺れそうな彼らを導くのは 光の言霊

最高潮を迎えた時、

天空から降り注ぐ黄金の光……


孤高の野生猫、セルダの作り上げた

有名なこの楽曲


他者との付き合いが苦手で

口下手な彼が手がける作品は

他者との絶妙な信頼と融合がなければ

体現し得ないというのも、興味深い


「何も意識なんかしてないよ。

あの時閣下がこの場所で見据えた景色って奴を

俺なりに音にしてみただけじゃんね」


「本当に、夏の夜空に打ち上がる

スターマインのようで、素敵ですよね💕」




 

35++に向けて、

これまでの楽曲を総ざらいしながら

セットリストを漠然と考えている最中


他愛もない会話を交わすイザマーレとセルダ

お茶を差し出しつつ、曲のイメージが脳内に浮かび

嬉しそうにニコニコするリリエル


「音楽ってさ、必ず他者との関わりを必要とするものだよね

もちろん、個々に突き詰めていくものでもあるし、

自分の心にじっくり向き合う要素もあるんだけど

それを世に生み出すときには、他者の協力が

必要不可欠だもんね」


「…そうだな。であるからこそ、正解は一つではなく

何通りにも枝分かれしていく…その面白みは

確かにあるよな」


「そうそう!それを言いたいんよ。

今の自分たちの全てを投影して、作り上げた物が

また、新たな色合いを生んでいく…

それを、いつだって楽しめばいいと思うじゃんね」


ギターを愛し、音楽を愛して

様々な旅を続けるセルダ


実は誰よりも調和を尊重し、

仲魔に絶大な信頼を寄せる、カッコイイ男だ


「…今秋からのツアーも、楽しみだな、セルダ。」


イザマーレの言葉に、

人懐こそうな笑顔で頷くセルダ



御挨拶


魔歴24年5月5日

ジェイル代官 発生日

お呪い申し上げます🙌🙌🙌


🌷里好🌷






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