イザマーレの放つ気配を頼りに、ほんの数分歩いたところで
目的地にたどり着いた。
「…なんだ、何てことはない、元老院の裏庭じゃない。」
ベルデはやや肩透かしだった
だがそこに、イザマーレが待ち構えていた。
それだけで、この空間がとても厳かなオーラに満ちていた
「ベルデ、お前は覚えているだろう?
昔はここに、副大魔王の執務室があったよな」
「冗談はやめてくれよ、そのくらいの豆知識、
常識じゃないか」
ウエスターレンの言葉に、呆れるベルデ
「そうだよな。だがこの場所は、それだけでは言い尽くせない
すべての始まりの場所だったんだ」
ウエスターレンは感慨深く、目頭が熱くなっていた
咲き誇る花々を見ながら、リリエルの目にも涙が浮かんでいた。
ここまでのリリエルやウエスターレンのやりとりを、
ただ不思議そうに見ていたダイヤ。
「あの…素敵な場所って……?ここ、何かあるんですか?
見たところ、ただの裏庭ですよね……?」
そんなダイヤの様子を見て、リリエルは確信した。
(やはり……)
「ここは、吾輩がリリエルと初めて出会った場所だ。
そして、ウエスターレンとも。」
「!!!」
ダイヤはまだ、不思議そうな顔をしていたが、ベルデは驚いた。
「そうか……この場所だったんだね。
そして、ダイヤちゃんの反応……そういう事だったんだ……」
「さすがベルデ。理解が早いな」
ウエスターレンが言う。
「あの、どういう事ですか。いい加減、教えてくださいよ……」
戸惑うダイヤ。
「ダイヤ。お前はリリエルから切り離した結晶だ、
と伝えていたよな。」
「はい」
イザマーレの言葉に頷く。
「それは間違いないのだが、お前にリリエルの魂はいない。
あるのは感情の一部と、リリエルに寄り添った記憶だけだ。
つまりお前は、生まれ変わった時点で、リリエルではない
別の人格、という事だ」
「!!」
「お前がいつまでも、吾輩と陛下の間で暴走するのは
お前の中にあるリリエルの記憶が、今も吾輩を求めているからだ」
「……」
「記憶として残るリリエルを救ってやりたくて、
今までお前を守り続けてきたが…
それは、お前のためにはならない。
お前自身として生きていくために、
お前に残るリリエルの記憶から解放させる」
「……!」
あまりのことに俯くダイヤ。
「お前がリリエルの幻影に惑わされず、強く立ち上がれば
無理に解放させなくても、自然にリリエルの記憶は消滅する。
だからこれまで、厳しく言い聞かせてきたつもりだが、
記憶だけとはいえ、リリエルの想いは
とてつもなく強いみたいでな」
そう言いながら、リリエルの髪を撫でるイザマーレ
「…少し…お時間ください…」
俯き、そう答えるのがやっとだったダイヤ
「ダイヤ様、本当にごめんなさい。私のせいで……」
リリエルは頭を下げて謝罪した
「せめてもの償いに、
貴女の意向を聞かずに解放することはしません。
心の整理がついたら、教えてくださいね」
何も言えずに、俯くダイヤを見て、ベルデが声をかける。
「ダイヤちゃん。大丈夫?連日のダンケルとのやりとりのせいで
魔力も消耗してるみたいだし、今日は、僕のところにおいで。
僕も君に話をしようと思ってたんだ。リリエルちゃん、いいかな?」
「ベルデ、俺も行く。ダイヤの上司は俺だからな♪
リリエル、イザマーレをよろしくな。」
そう言いながら、姿を消すウエスターレンたち。
その場に残されたイザマーレとリリエル。
ダイヤの心情を思い
涙を堪えるリリエルを抱きしめるイザマーレ。
「…リリエル。大丈夫か?」
「……はい。取り乱してすみません」
「あいつの事を思って泣くのは、仕方ないけどな。
せめてこの場所では、吾輩のことだけを見てくれないか?」
「!…閣下……//////」
ようやく顔を上げたリリエル。
「ウエスターレンも行ってしまったしな。
また来よう。この次は、ウエスターレンと3魔でな」
「…はい……」
やっと笑顔が戻ったリリエルを髪に乗せ、立ち去った……
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