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紅蓮の確信


「閣下。そしてリリエル様。今日は本当にありがとうございました。

貴重なお話まで聞かせていただいて、本当に嬉しく思います。

もう一度、よく考えてみようと思います。前向きに…

あの、その時は…よろしくお願いします///////」


「遠慮はいらない。何かあったら、

いつでもリリエルに会いに来れば良い。」

イザマーレはリリエルの髪を撫でながら、スプネリアに言う

リリエルもいつもの微笑みで頷く。


「スプネリア様…今日は夕食もご一緒にと思ってたけど…」


「お気遣い、ありがとうございます!でも、あの…

閣下とリリエル様のやり取りを見ていたら…///////」


「!あ…そうよね♪ふふっ 殿下によろしくね♪」


「お食事はまたの機会に…あの、良かったら、

たまには私に作らせてもらえませんか?

リリエル様の腕には負けるかもですけど…

パンケーキなら、ちょっと自信あるんです(^^♪」


「Σ( ̄□ ̄|||)…た、食べたーい♪♪是非、ご一緒させてね」



「…よしっ。今日はどうせ、お前ら、このまま扉を消すんだろ?

スプネリアは俺が送ってやるよ。」


紫煙を燻らせながら、

3名のやり取りを見守っていたウエスターレンが立ち上がる


「ああ、ウエスターレン。よろしく頼むな」



お辞儀をして、ウエスターレンと共に立ち去るスプネリアを

見送った途端、リリエルを抱きしめるイザマーレ…




 

「閣下…もうすぐ見れますね。スプネリア様のウェディングドレス…♪」

「ウエスターレンに任せておけば、心配いらない。おいで、リリエル…」


嬉しそうな笑顔で見つめるリリエルを抱き上げ、

部屋に向かうイザマーレ



…………


ウエスターレンに連れられて、屋敷を後にしたスプネリア


「長官にまで親切にしていただいて、ありがとうございました」

歩きながら、謝意を伝えるスプネリア


「どういたしまして。

お前が気にしていた、蛍の事だが…」


「…?」


「人間どもの都市開発によって地球の貴重な自然が奪われたのは、

お前にとって大切だったあの場所だけじゃない。

だが、子供だったお前に、何の責任もない。気にするな」


「!!…」


「バサラの邸宅に蛍が生息するようになったのは、

地球からのメッセージに違いないな」


「…それなら尚更、人間界に降りて、

少しでも小さな命を救える仕事がしたい…そう思います。

我儘な事を言って、すみません。

許可していただけたら、嬉しいのですが…」


数時間前まで、俯いて震えていたスプネリアはそこには居なかった

そんなスプネリアを、ウエスターレンは笑顔で見返した


「イザマーレもリリエルも言っていただろ?何の問題もない。

それは、ラァードルも、雷神帝も喜ぶはずだ。安心しろ」



 

「///////」


「だが、あまりお前だけで背負い込む必要もない。

我々がいつも傍にいるんだ。一緒にやって行こうな。」


「///…はい。ありがとうございます!」


魔界一の大悪魔イザマーレと、鉄壁の絆と称されるほどの

紅蓮の悪魔ウエスターレンの力強い言葉に、スプネリアの胸は高まり、

その瞳が一段と強く輝いた事を、ウエスターレンは逃さず見ていた



それからしばらくして、スプネリアがそっと呟く


「……長官。あの…」


「ん?どうした。まだ何か気がかりがあるのか?」


「あ、いえ。私の事ではなく…」


「?…リリエルの事か?」


「はい…ヨッツンハイム事件の事は、本当にお辛かったでしょうね。

未だに苦しまれてるなんて…長官もご存知なんですよね?

その時の事…」



「勿論だ。あの時の光景は、今でも鮮明に覚えている。

朝までいつもと変わりなかった屋敷が、

真っ暗闇になったあの日の事はな。」


「!!!!」


「あの屋敷の明るさは、すべて

イザマーレの光のオーラによるものだからな」


「……」

スプネリアは数か月前の事を思い出していた。




 

イザマーレたちが旅に出ている間、

専用ペットとなるための儀式を行うため

部屋を貸してもらった時も屋敷全体が真っ暗だったな、と…


「でもやっぱり、素敵ですよね。

閣下は間違いなくリリエル様を愛してらっしゃるし

リリエル様も我慢せずに、不安や不満を

ぶつけられるようになったら良いのに…」


俯きがちに、正直な気持ちを吐露するスプネリア


「いや、そうではない。

リリエルにとって自分の不安や痛みなど、とるに足らない事なんだ。

イザマーレの為なら、命を投げ出すことすら躊躇わない。

イザマーレの孤独を癒せれば、それだけで満ち足りてしまう。

そういう奴なんだ」


「…!!!!!」


「だが決して、ただ弱いだけじゃない。

イザマーレの為なら、鬼にも悪女にもなれる。

ま、それはおいおい、目にすることもあるハズだぞ♪」


そう言いながら、ほくそ笑むウエスターレンに

スプネリアはただ不思議そうに眺めるだけだった



 

その頃、屋敷のリリエルの部屋で

いつものようにイザマーレに抱かれ、眠りにつくリリエル

その寝顔を愛おしく眺めていた時、ウエスターレンの気配を感じて

そっと扉を開け、確認しに行くイザマーレ


「ウエスターレン。おかえり」


「よ!ただいま。どうした?姫を置き去りにして、叱られるぞ?」

ニヤっと笑ってイザマーレの髪を撫でるウエスターレン


「///余計なお世話だ。リリエルは今、寝ている。

それで…スプネリアはどうだった?」

顔を真っ赤にして照れながら、気になることを確認するイザマーレ


「問題ない。バッチリ♪」


「そうか…あの事を伝えたのか?」


「いや、それはまだだ♪お楽しみは、これからだな♪」



「…かっか…?」

「ん、ああ、リリエル。すまない、目が覚めたんだな?」




 

部屋の中から自分を呼ぶリリエルの声に

イザマーレはすぐベッドに戻り、扉を消す



「安心しろ。吾輩はここにいる」

抱き起して、リリエルの髪を撫でる


イザマーレのぬくもりにホッとしながら、

ぎゅーっと抱きついてくるリリエル

寝ぼけた状態で、イザマーレの背中をぽんぽんとする


「かっか…いつも、おそばにおります。心配なさらないで……」


寝言のようなリリエルの言葉に、イザマーレは微笑む


「そうだな。ずっと一緒だな。

吾輩も、二度とお前を手放さない。良いな…」


イザマーレの声に、心から幸せそうな笑顔になるリリエル

優しく口唇を重ね、再び愛し始める……






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