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紅蓮の逡巡


場所は緑の生い茂る文化局の森


「よっ!今いいか」

「ウエスターレン、その姿では久しぶりだね。もちろん平気だよ。」


ベルデは、椅子をすすめ、使用魔にお茶の手配をする。


「…魔力がだいぶ消耗してるね。やりすぎだよ(苦笑)」

「いや、まあなに、あれだ。心配かけたな」


多少、気恥ずかしく思いながらも、受け流す風体は、

まさしく紅蓮の悪魔、ウエスターレンそのものだ。


「それで、僕のところにきたってことは、決めたんだね」

「……その件だが…その…」

「まさか、まだ迷ってるの!?」


ベルデの驚きの声にウエスターレンの顔が曇る。

ウエスターレンはため息をつきながら

おもむろに煙草を取り出し火を着けた。

ゆっくりと立ち上る煙を見届けてから座る。


「…ウエスターレン?」

「最高魔軍の活動に俺が関わって良いものなのか…

復活したら誰がダンケルを護衛するんだ?

天界から襲撃が来たとしてダンケルに何かあったら遅い…」


「…でも心配いらないってダンケルも言ってただろ?」

「…しかし…」




 

「イザマーレだって一緒に居たいって思ってる。

だけどウエスターレンが頑なに復活しないと言えば

あいつの事だ。ウエスターレンの言った事に何も言わずに諦めるだろうよ。

でも僕は復活して欲しい。僕だけじゃない。

特にイザマーレは尚更、一緒に居たいんじゃないかな?」


「…………」


「それに、ウエスターレンの復帰を願っているのはイザマーレだけじゃない。

何十万もの熱い信奉者たちの切なる願いなんだ。

もちろん、僕も願っているんだよ」


「…ふぅ…、あいつと距離を置くことが、

最終的にはあいつのためになるって、ずっと思ってたんだ。

だが、離れるなんて無理なんだ。ほんと、バカだよな。」


「…最高魔軍への復帰となると、ダンケルから正式な許可が必要だね。

そっちは僕に任せて。 イザマーレには…どうだろう

この森で、みんなの前で誓ってあげたらどうだろう」


「なっ、そんな事出来るか!」


「でもウエスターレン。全て知っていた僕とは違って、

イザマーレは何も知らずに君に嫌われたと思いながら

過ごしていたんだよ。それでも君を思い続けたんだ。

心にどれだけの傷を負っているか、想像しきれないよ」


「……」



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