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素敵なお手本


ベルデの医務室…


ダイヤの輸血は終わったものの、食事は一切口にしてなかった。

ベルデの元で働いているスタッフ達は、

懸命にダイヤに食事を進めたり話かけたりしているが…

起き上がる力も無く、全く食べず背中を向けたまま黙っていた。


「ダイヤちゃん…またご飯食べてないの?

食べないと腕も治せないから…無理にでも食べないと…

治るものも治らないよ?」


全くお膳に手を付けられていないのを確認しながらベルデは言った


「……」


ベルデが言ってる事は充分に分かっていたが…

ダイヤなりに起き上がって食べようとしていたのだが

ひどい激痛とめまいで、食べるのも一口程度がやっとで限界…

それに正直、食事が運ばれて来る時間や音ですら苦痛に感じ、

気持ちもげんなりしていた。


「ダイヤさん!今日は食べてくださいね!

力付けて腕を治しちゃいましょう!」




 

お膳をベットの横にある机に置いてスタッフは部屋を出ていった


「…」


チラッと見るだけでダイヤはベットに頭まで潜り込み

目を閉じてため息をついた

痛みに耐える疲れで、ウトウトし始めていた


真夜中…頭を撫でられたように思いダイヤは目を覚ました


「???」

ジクジク腕の痛みが増してくる…

今のは気のせいか?と思いながらダイヤは再び痛みで唸る…



「…はぁぁ…痛い…

痛みで幻覚も見るようになったか…

しょうがね~な…私は…」

呟いて痛みに耐えつつ笑っていた。


部屋の中は月明かりで照らされていた。


「……忘れていた優しい人を思い出している…か…」

ふとダイヤは呟いた。

何故今、思い出したのか…涙が溢れる…

夜中だし誰も居ない部屋…誰も聞いてないし、

弱音はいて泣いてもいいよね…


「誰か…助けて…痛いのもう限界…とどめを刺して…

私を楽にさせて…誰か助けてよ…」

ベットに潜り外に聞こえないように泣いていた。


ひとしきり泣いた後…やっと少しは落ち着いた。

しかし再び身体を撫でられる感覚があった。



 


ダイヤは目を真っ赤にしながら布団から顔を出した。


「…え??何で…」


月明かりの中、ベットの横に立っていたのはイザマーレだった


「…いつから?居たのですか…」


「お前が泣く前から居るが?」


「…」


ダイヤは弱音を聞かれた事に真っ赤になって布団に潜ったが

イザマーレには構わずに捲られてしまった


「…ろくに食事もしてないそうだな」


「……痛みが酷くって…」

ダイヤは何故か涙が止まらなかった。



「…食わないと腕の治療も出来んだろうが…」

イザマーレはため息を付いた

「…このまま死ぬつもりか?ダイヤ」


何も言えず手で顔を押さえた。

泣き顔を見られたくなかった。


「何故ベルデに相談せずに

1魔で苦しんでる?お前の悪い癖だな」


「…相談なんか…出来ません…私は…

必要とされてない厄介な結晶だから…」

泣きながら呟いた



 

「自分はリリエル様から切り離された厄介の結晶…だから…

閣下と別れてから何とか強くなって…行かなければ心が折れてしまう…

厄介な奴に相談されてもご迷惑をかけるだけ…

それに…優しくされたら…また…気持ちも揺らめいてしまう…」


「…ダイヤ…あのな…」


「だから厄介な結晶は…いなくなった方がいい。

厄介な結晶はそれなりの…終わりかたで…苦しんで…居なく…」


「ダイヤ!黙らんか!」

イザマーレは怒鳴って話を止めた


「確かにお前はリリエルから切り離した結晶だ。

だが一度でも吾輩が、お前に向かって厄介な結晶だと言ったか?

言ってないだろ!」


「……」


「今まで周りからどう言われたのかは知らんが

吾輩はお前の事を厄介な結晶だとは思っていない。

大切な存在だ。お前に死なれては、吾輩が困る」

イザマーレははっきりと言い切る。


「陛下が目覚めないのも、お前が復活しなければ目覚めないように

自身で魔力をかけてるようだな」



ダイヤはイザマーレの話を黙って聞いていた


「他の者に厄介な結晶と言われようとも、

お前はそんな事を思うな。良いな?」


イザマーレはベットに上がりダイヤを見下ろした



 

「お前が少しでも復活出来るよう手助けしてやる

いつもの様に元気な姿を見せてくれ…ダイヤ…」

微笑んで口唇を重ね、お互いの舌を絡め唾液を味わい

ダイヤにエナジーを送った


次の日ダイヤが朝目覚めると

身体に力が湧き、起きて食事も取れるほどに復活していた…






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