……
「…そうだったの…」
屋敷のリビングで、スプネリアの話を聞いたリリエル。
「私たちにとって、何にも代えがたい、約束の場所でした。
その場所が大人たちの都合で埋め立てられ、守り通すことが出来なかった…
殿下が大好きだったあの場所が奪われてしまった怒り、悲しみ、憤り……
今でも忘れることが出来ないのです。蛍に対しても、申し訳なくて……」
震えて涙を流しながら、何とか話をするスプネリア。
リリエルはその手を握りしめながら、優しく微笑む
「…良かった、蛍の事が憎くて大嫌いではないのね?スプネリア様」
リリエルの言葉に、少しだけ落ち着くスプネリア
「…はい。空気が澄んでいて水が清らかな環境じゃないと
蛍は生きられないのです。その分、幻想的なんですよ♪」
「そっか…私も見てみたいな♪
参謀の邸宅に行けば見れるのかしら?」
思い描いて、ワクワクし始めるリリエル
リリエルの様子に、スプネリアも笑みを浮かべる
「リリエル様…閣下に寄り添うリリエル様のように、
私も殿下のお役に立ちたいと思っています。
それでも、未だに当時の事が忘れられず、思い悩んでしまうなんて
殿下に対しても、申し訳なくて…」
「うーん…殿下なら、スプネリア様の悩みも全て
受け止めてくださるのでは?」
リリエルは首を傾げながら呟く
「…今みたいに、感情が高ぶってしまうので、
殿下にどう話せばいいかも分からなくて…///////」
少し頬を染めて、俯くスプネリア
リリエルはお茶を飲んで、ある場所を見つめた
吹き抜けになっているリビングから見上げた視線の先には
イザマーレのプライベートルームがある
「ねえ、スプネリア様。何も我慢する必要なんかないのでは?
高ぶる感情はそのまま殿下にぶつけてあげたらいいわ。
大丈夫。殿下なら、スプネリア様の涙も全て、
必ず受け止めてくださるから…」
「…!!」
静かに微笑み、再びお茶を飲むリリエルに
スプネリアは聞かずにはいられなかった
「…リリエル様も、そうなさったのですか?閣下に…」
リリエルはにこやかに笑いながら、瞳を閉じて首を横に振る
「他人様にエラそうな事言っておきながら…
私って本当にダメなの…」
「……っ、リリエル様…」
「リリエルは、我慢していたんじゃない。出来なかったんだ。
泣きじゃくって感情をぶつけたい相手が、
その場にいなかったからな」
「そうそう。その代わり、あかずの扉に行く日の朝まで
泣き続けたんだ。笑顔さえ失ったままな」
「……!!」
突然姿を現し、リリエルを抱きしめるイザマーレと
続いて現れたウエスターレンの言葉に、驚愕するスプネリア
「今でも、吾輩の前で涙を見せることは苦手だな。」
リリエルに向かって微笑み、優しく髪を撫でるイザマーレ
「///…も、もう!それでも私の醜い感情など、
すべてご存知ですよね…」
「当然だ。吾輩に隠し事ができるわけなかろう?
それなのに隠そうとするんだよな。誰かさんは♪」
そう言ってニヤっと笑うイザマーレ。
「ただいま、リリエル」
「///お帰りなさい♪今、お茶をお持ちしますね」
すこし恥ずかしそうにしながら、笑顔で立ち上がり
キッチンに向かうリリエルを見ながら、
スプネリアは改めて感心していた
「…それでも今は、そんな苦悩すら
乗り越えていらっしゃるんですよね?
本当に凄いなあ…」
「乗り越えてなどいないぞ?今もしっかり、現在進行形だ」
スプネリアの呟きに、イザマーレが語り始める
「それは確かに吾輩が、あいつに背負わせてしまった傷だ。
そう易々と忘れられるわけはない。
そして、忘れてはいけない事でもあるのだ。
もちろん、吾輩も決して忘れない」
「!!」
「忘れるのではなく、誤魔化すのでもなく
あいつと吾輩で、背負い続けていくものだ。」
「…閣下」
イザマーレの力強い言葉に、スプネリアの瞳の色が強くなる
「その覚悟があるなら、もう決断してもよいのではないか?」
「…!」
「リリエル、お前はどう思う?」
4名分のお茶を淹れて戻って来たリリエルに
問いかけるイザマーレ
「ええ、勿論。私も閣下と同じように思っておりました♪
もう大丈夫。それどころか、今は、一時も離れることなく、
お傍にいたいのではないかしら?スプネリア様♪」
リリエルはにっこり微笑んで、断言する
「…///////」
突然、真っ赤になり照れ出すスプネリア
「あ…あの、でもですね。実はいろいろ考えている内に
やりたい事も出来てしまって…」
「人間界でのボランティア活動の事?プエブロドラドで、
ダイヤ様とお話になってたわよね。」
「!!??」
「…それこそ、何の問題もないんじゃないかしら?」
口に手を当てて首を傾げながら、
チラッとイザマーレを見つめるリリエル
そんなリリエルの髪を撫でながら、イザマーレも頷く
「そうだな。何一つ、問題はない。…リリエル。ほどほどにな♪」
「……(* ̄▽ ̄)フフフッ♪」
「?」
急にウキウキし出すリリエルを、不思議に思いつつ、
そんなやり取りを見届けるしかないスプネリア
「でも…そうですね。そうなると…やはり元老院に…?」
「ああ、それが良いだろう。あそこなら、
我々の保護下で暮らしていけるからな。だがそれだけは
さすがに陛下の許可も要る。ついでだからまとめて報告に行くか。」
「素敵です(≧∇≦)♪ 私にもお手伝いさせてくださいませ♪」
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