傷心のイザマーレを慰め、屋敷に戻った途端、
ダンケルから呼び出しを受けるウエスターレン
「ちっ…こんな時に……」
苛立ちを隠さないウエスターレン
「こら、ウエスターレン。陛下に対しそのような……
まあいい、吾輩の事は気にするな。大丈夫だから」
ウエスターレンに愛された事で、多少の落ち着きを取り戻したイザマーレ。
「すまないな。すぐに帰って来るからな」
イザマーレと軽く口唇を合わせ、魔宮殿に瞬間移動したウエスターレン。
するとそこに、屋敷から逃げ出したダイヤが座り込み、泣き続けている。
さらに、ダンケルに促された部屋に入った途端、気がついた。
すぐ隣の部屋に、リリエルがいることを……
なるほど……これですべて繫がった
なぜリリエルが部屋から姿を消していたのか。
それも、急に彼女だけが消えたかのように……
ダンケルの悪ふざけ……
それがどれだけ、イザマーレを傷つけたか、分かっているのか!!
リリエル、お前はこのような仕打ちを許せないはずだ、
そうだろう?
隣の部屋は広く、ダンケルの趣味一色の部屋だった
部屋の中のある一点を見つめていたウエスターレン。
「…ダンケルらしい部屋だな…趣味合わないわ…(苦笑)」
ダイヤの気持ちを和らげようとしたのだが、
ダイヤは顔を引きつらせて黙っているだけだった。
「座れ」
ウエスターレンは椅子を引いてダイヤを座らせた。
「ダンケルから少し内容は聞いている」
ウエスターレンもダイヤの前に座って言った
「……リリエル様は…閣下の妻だったと、陛下から聞きました…」
「そうだ。リリエルはイザマーレの妻だ。Lilyelの生まれ変わりだよ」
「……そうなのですね…それなのに何故、私なんかを座らせたのでしょうか…
妻が座ってるのに…」
「それはリリエルが、お前を必要としてるからだろうな。」
「!…私と愛契約までして…リリエル様を傷つけると分かってるのに…
そんな閣下に愛されて、喜んだ自分は最低です!
閣下から、リリエル様におねだりされて契約を結んだって言われて
気になっていたんです。リリエル様からのおねだりがなければ、
閣下は最初から、私なんか見向きもしてない…
そういう事ですよね。何してんだ私は…」
顔を手で押さえ泣いた
「…イザマーレを愛してるんだろ?だからリリエルに嫉妬する。
耐えられなくなり、イザマーレに自分を抹殺してくれと頼んで、
叶わなければダンケルにまで…
あのな、そんな事で抹殺してくれるとでも思ったのか?」
「……」
ダイヤは俯いた
「じゃあ、俺はどうするんだ?リリエルもいて、お前もいる。
そんな事で気持ちが揺らめいたら、命が幾つあっても足りないぞ」
答えるウエスターレンの視線は部屋のある一点に向かっていた
「俺があいつを愛しく思うのは
強い決意でどんな逆境があっても信念を曲げず、
言った事を必ずやり遂げてみせるからだ。
自らの危険も省みず、人間になってまで
記憶を消されたままのリリエルを見守り続けたんだぞ。
リリエルから再び愛される保証などないのに。
そこまでの事を、あいつの他に誰が出来たと思う?
イザマーレだから出来た事だ。もちろん逆の立場なら俺もそうする…」
煙草を吐きながら言った
「そして、記憶を失ったままにも関わらず
昔と変わらずイザマーレに愛を寄せるリリエルを
俺は尊敬している。俺も、そうでありたいと思う。」
かつての自分と重ね合わせ、自嘲気味に言うウエスターレン。
ダイヤはやっと気持ちが晴れたのか頷いて微笑んだ
そして、ウエスターレンに連れられ、イザマーレの屋敷に戻って行った。
……
ダイヤとウエスターレンが立ち去り、誰もいなくなったはずの部屋に、
呆然とへたり込む影……リリエルだった。
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