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絆に咲く花


傷心のイザマーレを慰め、屋敷に戻った途端、

ダンケルから呼び出しを受けるウエスターレン



「ちっ…こんな時に……」

苛立ちを隠さないウエスターレン


「こら、ウエスターレン。陛下に対しそのような……

まあいい、吾輩の事は気にするな。大丈夫だから」


ウエスターレンに愛された事で、

多少の落ち着きを取り戻したイザマーレ。


「すまないな。すぐに帰って来るからな」


イザマーレと軽く口唇を合わせ、

魔宮殿に瞬間移動したウエスターレン。


するとそこに

屋敷から逃げ出したダイヤが座り込み、泣き続けている。


さらに、ダンケルに促された部屋に入った途端、気がついた。

すぐ隣の部屋に、リリエルがいることを……



 

なるほど……これですべて繫がった

なぜリリエルが部屋から姿を消していたのか。

それも、急に彼女だけが消えたかのように……


ダンケルの悪ふざけ……


それがどれだけ、イザマーレを傷つけたか、分かっているのか!!


リリエル、お前はこのような仕打ちを許せないはずだ、

そうだろう?


「リリエル様は…閣下の妻だったと、陛下から聞きました…」

向かい合って座るダイヤの問いかけに

答えるウエスターレンの視線はリリエルに向かっていた

「そうだ。リリエルはイザマーレの妻だ。Lilyelの生まれ変わりだよ」



たかが愛契約のことでグダグダと悩み、嫉妬なのか甘えなのか

よく分からない怒りをぶつけるダイヤの事など、どうでも良かった


かつて、リリエルがウエスターレンに問いかけた言葉


…閣下のことを忘れ、何をなさってるのですか。

誰よりも長官の事を待ちわびている閣下の孤独を、お忘れですか…




 

リリエル、あの時のお前の問いに答えてやる


「俺があいつを愛しく思うのは、

強い決意でどんな逆境があっても信念を曲げず、

言った事を必ずやり遂げてみせるからだ。

自らの危険も省みず、人間になってまで

記憶を消されたままのリリエルを見守り続けたんだぞ。

リリエルから再び愛される保証などないのに。

そこまでの事を、あいつの他に誰が出来たと思う?

イザマーレだから出来た事だ。もちろん逆の立場なら俺もそうする」


煙草を吐きながら言った


「そして、記憶を失ったままにも関わらず、

昔と変わらずイザマーレに愛を寄せるリリエルを

俺は尊敬している。俺も、そうでありたいと思う。」


隣の部屋に佇むリリエルの様子を見届け、

ダイヤを連れて屋敷に戻ったウエスターレン


ウエスターレンの言葉に衝撃を受け、呆然と座り込むリリエル。

その瞬間、封印されていた過去の記憶がよみがえり

覚醒した。


一部の記憶を除いて……




ウエスターレンがダイヤを連れて戻ってきた

ほっとして抱きしめるイザマーレ

リリエルが消えてしまった今

ダイヤに残るリリエルの幻影は一縷の望みだった


だが、そんなイザマーレにダイヤが反発する


リリエルは確かにLilyelの生まれ変わりだ。

だが、リリエルにさえ隠している秘密を

なぜお前に話す必要がある?




 

愛契約程度の事で、リリエルを悲しませているだと……?

お前には分からないだろう。

リリエルがこれまでに味わった悲しみの深さを

そんなリリエルの願いだからこそだ。それさえも分からないお前は

やはり、リリエルとはあまりにも違う、幼い魂だ。



「…イザマーレ閣下…本当に今まで有難うございました。

どうか…リリエル様を大切に…どうか、閣下が仕方なく

愛と忠誠を誓わせた馬鹿な女など忘れてください…

言われなくっても忘れるか…」


泣き笑いしながら別れの言葉を言い捨て、

出ていくダイヤに失望するイザマーレ


ダイヤを見限り、ため息をついているイザマーレを

ウエスターレンが慰める。


「…まあ今は、そっとしておくのがいいんじゃないか?

あいつの気持ちも分からなくないしな」


「……」


「それより、お前が喜びそうな情報を仕入れてきたぞ。

まあ…これは楽しみにとっておけ。

そんなに時間はかからないだろうから」


「?」


含みを持たせたウエスターレンに首を傾げながら

身をゆだねるイザマーレ。



その時、とてつもなく強い波動を感じ取った2魔


「!」



その波動の在処を確かめ、驚くイザマーレ

「…リリエル……」




 

リリエルの覚醒を確信したウエスターレンは、ほくそ笑んでいた



ダンケルを睨みつけ、叱り飛ばすリリエルは

かつての妻、そのものだった


ダイヤの言い放った言葉で

リリエルを悲しませていたのかと

多少気にしていたイザマーレだが、

相変わらず、自身の事で見境をなくすリリエルの様子に

微笑みを浮かべ、見守っていた


「クククッ、あの様子なら、間もなくだな♪

一刻も早く会いたいだろう?俺が迎えに行ってやる。

その間に泣き顔を何とかして、カッコいい王子の姿で迎えてやれ。

分かったな?」


「///分かった…ウエスターレン。よろしく頼む」


「これから、泣きたい時は俺の所に来い。

姫君の前でも泣き虫のままでは、見限られても知らないからな♪」


「////////…ああ……」


もう一度、固く抱きしめ合う2魔





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