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結晶のかけら

魔宮殿で魔力の勉強しに来ているダイヤを見守りつつ

ダンケルは出会った頃の事を思い出していた。


地獄の管理状況を視察するダンケルの護衛で、

たまたまイザマーレも出向いていた。

全ての確認を終え魔界に戻ろうとした時、

使用魔が面白い話をしてきたのだ。

最近幼い少女が彷徨っている。それもこの場所の事すら分からず、

人間に近い魔物に怖がりもせずに話し掛けていると…


ダンケルは興味を持った。

その幼き娘が魂ではなく人間の姿で何の目的で魔物に話し掛けているのか…

それも何故この場所で彷徨っているのかも知りたくなった。

使用魔は止めに入ったがダンケルは微笑み話を遮り

イザマーレとダンケルは少女が居そうな場所を歩き始めた。


「あ!お兄ちゃん!」

パタパタと嬉しそうに走って少女はダンケルに抱きついた。


ダンケルも驚きながら少女を抱きしめ、しゃがんで顔を見た。

人間の年齢で7歳位か...ダンケルは優しく頭を撫でて微笑んだ


「良かった!人がいて…」

安堵する少女はニコニコしていた


「…どうしてここに?迷ったのかな?」


ダンケルが言うと少女は考えて話し始めた


「私ね、病院で手術する日だったんだけど…

目を覚ましたら真っ暗なここに居たの…

目を覚ましたら手術は終わってるからって先生から聞いたの…

けど…病院じゃないし…お兄ちゃんここ何処なの?」



 

不安そうに周りを見て言った。

イザマーレの事を見て驚き、一瞬ダンケルに飛び付き隠れた


「イザマーレ、怖がられてるね…大丈夫だよ彼も優しいから」

ダンケルはニコニコして少女に言った


イザマーレは少女の事を透視をして驚いていた

「…陛下…この子…」


イザマーレの愕然としている顔を見て、

ダンケルも少女の今の状況を透視した。

病院のベッドに眠る少女。手術後らしく

機械に囲まれ身体中に管が通っている。

終わったにも関わらず少女は目覚めてない。

医者と看護婦が慌てて走り回り、血圧などを調べている。

1人の看護婦と医者は少女の両親に別の部屋で説明をしている。

そしてまた手術室へ少女を連れていっているのも見えた。

死ぬか生きるかの瀬戸際か…ダンケルは再び優しく頭を撫でた。


「…陛下…この子を助けてやって貰えませんか?」

イザマーレから意外な言葉にダンケルは振り返った


「…なに?」


「…陛下、この子はまだ生きて行くべきです。

あんなに機械と管に繋がれ、痛い思いまでして…

こんな幼い子がまだここに居ては…」


「お前からそんな言葉が出るとはな…」

ダンケルは改めて少女を見た。一瞬、イザマーレを怖がったが

人懐っこく、近寄ってマントの中に入ったりして遊んでいる。

イザマーレもしゃがんで、少女にちょっかいを出し笑わせている


「陛下どうかこの子を…」

イザマーレは改めてダンケルに言った。



 

ダンケルは少女に聞いた

「もし、目が覚めたら何がしたいの?」


「友達と思いっきり遊びたい!

今まで走ったりするのが駄目って先生に言われてたから!

いっぱい友達と遊びたい!」


彼女の願いだった。


一切激しい運動は止められ、学校でも遊ぶ事すら制限され過ごしていた。

遊びたいのに友人からも「貴女は心臓が弱いから遊べない」と皆に言われ

幼いこの子は常に孤独と戦っていた。ダンケルは少女の心を全て読み取った。


「…イザマーレ…この子を魔界に連れていくか?」

「駄目です!まだ見ぬ未来を奪っては…」


イザマーレは言ったが、悪魔が人間の情に流されてると気付き黙り込んだ。

「……」

ダンケルはイザマーレを見つめていた


「ねぇお兄ちゃん!遊ぼうよ!」

ニコニコして少女は言っている。


「…ごめんね…私はそろそろ戻らないといけないのだ。

あなたもここに居る場所じゃないよ?目が覚めたら友達と遊びたいんでしょ?」

ダンケルはほっぺを優しく撫でて言った


「もうここに来るんじゃないよ?これから大人になって色々あるかもしれないが

決してここには来るのではないぞ?良いな?またいつか会えたら会おうね」

ダンケルは少女を一瞬で人間界に戻した


少女が2回目の手術を終えやっと安定している姿を確認してダンケルは言った

「…今回だけだぞ…良いな、イザマーレ…帰るぞ」

ダンケルはにこやかに言って、2魔はその場を後にした



あれから数十年後。

魔宮殿に魔力の勉強をしてイザマーレを守りたいと願って来ているダイヤを

嬉しそうにダンケルは見詰めていた…



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