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結晶のまなざし


光と紅蓮のエネルギーが小屋に現れる寸前

ベルデがダイヤの前に現れていた。


「…和尚…」

ベルデの顔を見て涙が溢れてくる。


「ここはリリエルちゃんに任せとけば大丈夫だから…

さぁ帰ろう。ダンケルも裕子ちゃんも待ってるから」

ベルデが優しくダイヤを諭す。


涙を拭きながら頷いて、ベルデが出した魔法陣に入って

一緒にその場から姿を消した


魔宮殿に戻ったダイヤが大魔王の執務室に姿を現すと

裕子が駆け寄り抱きついてきた。

「大丈夫だった?なっちゃん!…良かった…心配したよ!

和尚にお願いして連れ戻してもらったの!」


ベルデがダイヤの元に迎えに来たのは裕子のお願いだったのだ。


「お帰り。ミサ楽しかったか?」

裕子の心配を余所に、書類に目を通すのを止め、

顔を上げるダンケル


「陛下!私達、天界の奴らに誘拐されたの!

リリエル様だけが魔力使えて、私、何も出来なかった!

何とか助けないと!力を貸して!」


ダイヤが焦ってダンケルに言うが…


「…はあ?あいつなら心配いらんだろ(笑)」


ダンケルは退屈そうに指を鳴らし、

壁にリリエル達の様子を映し出した。




 

イザマーレとリリエルが共に歌い上げ、

荒れ狂っていた重々しい空気も、空も草木も、

穏やかさをとり戻していく…


2魔による奇蹟の旋律にダイヤと裕子も聞き惚れていた



「…ほらな?…

しかし、リリエルを本気で怒らせるとか、バカなのか?

どうせゼウスが考えもせずにやらかした事だろうがな…

それにお前が無事ならそれで良い」


ダンケルは再び書類に目を通しはじめていた。


「僕もあんな強い波動の場所は、遠慮するよ…

あの3魔は最強だからね…。」

ベルデは引きつって言った。


ダイヤは再び壁に映し出された映像を見ていた


(…やっぱりリリエル様には敵わない…

結晶なのに…何の役にも立てなかった…。)


『…お前はお前らしく胸を張ればいい。

役に立っていない等と考えるな…。

もしお前に何か有れば即、私が助けだす』


ダイヤの心に伝わるダンケルの声に振り返る。

目が合うと静かに微笑み、

再び書類に目を通し始めたダンケル陛下


いつもと寸分違わぬ、魔界の空気……

少しも動じず佇む大魔王の姿に、

ようやくダイヤの心も落ち着きを取り戻す


長い夜が終わろうとしていた……







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