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結晶を救うのは


ダイヤはイザマーレに抱きあげられていた腕の中で

目を覚ましたが意識朦朧としていた

「…う…で…痛い…目が回る…気持ち…悪い…

だれ…か…助けて…も…いやぁ!!…」

微かな声で泣きながら呟いていた


「ダイヤ、しっかりしろ!」


ダイヤ自身、誰に言われてるのか、分からない。

目の焦点すらも合っていない



 

「…痛い…とどめ刺して…お願い…耐えきれない…」

痛みが酷くなってるらしく泣きながら息も荒くなっている

「馬鹿者!何を言ってるのだ!」

イザマーレは怒鳴ったがダイヤには聞こえていない。

痛みで唸っていた


「イザマーレ!こっちの部屋に来て!輸血するから!早く!」

ベルデも医務室に着き輸血の準備しながら怒鳴った。

イザマーレはダイヤをベッドに寝かせた…


数日後、イザマーレはリリエルとウエスターレンを連れて

ベルデの医務室を訪れた。


ダンケルの見舞と兼ねて、ダイヤの様子も見に来たのだ。


リリエル達の前では、ダイヤが死のうがどうなろうとも

気にもしてない顔をしていたが…心の中では心配をしていた。

痛みで『とどめを刺してくれ』と泣きながら訴えていた姿が

何故か頭から離れなかった。


「ダイヤ様、お元気だと良いのですが…」

リリエルは心配そうに呟く


「……」

イザマーレは黙ってリリエルを見ていた


「リリエルは心配性だな…」


リリエルの髪を撫でて言ったが、

ウエスターレンも心配しているようだった。


ベルデはダイヤの居る部屋から出てきて、イザマーレ達に気付いた


「ベルデ、ダイヤは起きてるか?」

イザマーレが聞くとベルデは無言で横に首を降った。

リリエルとウエスターレンはダイヤの居る部屋に入っていった


「…イザマーレ、少しいいかな?」




 

ベルデは場所を変えてイザマーレと2魔になった


「…ダイヤちゃんの事だけど…」

ベルデは話し始めた

「目が覚めたのは良いんだけど…腕の痛みで夜も寝てないし、

食事も全く手を付けてくれないんだよね…

既に3日は飲み食いしていない。僕が何を言っても食べないんだよ」


「なにっ、3日間!?」

驚いてイザマーレは聞き直した。


ベルデは頷きながら…

「ダンケルが起きてダイヤちゃんにエナジーを少しでも返せば

多少は食欲も湧いてくると思うし復帰してくるとは思うんだけど…

当分ダンケルも目覚めない…それに、腕を治してあげたいんだけど…

神経も噛み切られているから…

魔力で治すにも激痛を伴うし体力も消耗しちゃう。

何も食べてない状態で治すのは危険。

点滴だけで栄養分取ってるだけじゃ治すのは無理なんだ…」


「…そうか。痛み止めでも効かないのか?」


「…時空に耐えられない時に痛み止めで飲んでたあの薬がMAXだから、

人間の時に効かなかったのは点滴に混ぜても効かない。」

ベルデはため息を付いた


「今は痛みで絶望時期に入ってるから

リリエルちゃんとウエスターレンが励ましても

多分耳にも入らないと思う…

だけど…イザマーレなら

ダイヤちゃんの絶望期を取り除けると思うんだ。」


「……」

イザマーレは黙ってベルデを見つめていた



 

「痛みと、ダンケルに生き血を吸われた恐怖も

少なからず有るのかも…そんな中、彼女はひたすら

何も言わずに痛みと不安に耐えている。

食事も取らないのは、このまま消えても構わないと

本気で思ってるんじゃないのかな…。

誰かに甘えたいとかではなく…

ただ自分の身体の痛みと不安だけで何も考えられず

どうでもよくなってる感じだよ」


ベルデはため息を付いた


「医者の僕が言うのもなんだけど…

イザマーレがダイヤちゃんの事を

厄介な結晶で、どうでも良い存在ならば

放って置けばいいと思う。

ダンケルが起きた時に彼女が居なければ諦めるだろうし…。

でも、少しでも助けてあげたいと思うなら

助けてあげてはどうかなって…思って…

君だけに話した。重い話ですまないけど…

生かすも殺すも副大魔王閣下の判断に任せるよ」

ベルデはイザマーレを見て言った


「話は分かった…」

イザマーレはゆっくり目を閉じ、再び考え始めた




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