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花のいない屋敷


天界で起きた事件を、すべて見ていたイザマーレ。

Lilyelに対する仕打ちへの怒り。それこそが

ヨッツンハイムから抜け出すほどの魔力になった


だが、本当の喪失感を味わうのは、屋敷に戻ってからだった


どんなに孤独な日々でも

屋敷に戻ればいつもそこに居たLilyelが

駆け寄ってくることもない


いつも抱き合っていたプライベートルームにも

その笑顔がない


Lilyelという存在が、イザマーレにとって

どれだけ大きい存在だったのか

今更ながら、痛感していた


拳を握りしめ、肩を震わせ、涙を流すイザマーレ


それなのに魔界は、己の復活だけを殊更喜び、歓喜に沸いている


ダンケルはイザマーレを副大魔王に任命し、忠誠を誓わせる。

常に自身を律し、その激務をこなすイザマーレだが

Lilyelを失った哀しみを忘れることはできず、

一魔、誰もいない時に泣き崩れる日々……



Lilyelを守りきれなかったウエスターレンに対し、

責め立てることは一切なかった。

それどころか、感謝の意まで伝えるイザマーレ。


「お前まで、吾輩の前から居なくなるなよ?」

と見つめられ、堪らず抱きしめ、愛し合う


イザマーレとLilyelを失い

凍り付いていたウエスターレンの時計の針が

ようやく回り始めた






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