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花を見送る


魔界に珍しく青空が広がっていた…


森の奥深い誰も来たことのない場所に

ダンケルに連れられダイヤは立っていた


目の前には結界が張り巡らされている鉄の扉…

ダンケルや副大魔王しか入れない儀式に使う所だった。


この奥には…イザマーレが待っている…


ダイヤは俯きダンケルの横に立っていた


そして…魔法陣でウエスターレンとリリエルが姿を現した。


「……」


ダイヤは無言で顔を上げリリエルの前で跪いた

「リリエル様…最期の見送り魔をさせて頂きます。

何なりとお申し付けを…」


「宜しくお願いしますね」

リリエルは微笑んで言った。



 

リリエルの顔を見たダイヤは

心がえぐられそうになりながらも無言のまま耐えた


「陛下、扉を…」

立ち上がりダンケルに伝えた


ダンケルが呪文を唱えると、

鈍い音を立てながらゆっくりと扉が開いた


「…ご案内致します…中へお入りください」


ダイヤが先に入り

後からリリエルとウエスターレンも中に入った。

3魔が入ると扉は消え石の壁となった。


「…リリエル様、今から身を清めてもらいます」


ダイヤは振り返りもせずに歩きながら伝え扉を開けると

真っ白な広い部屋に身体を清める入浴場があった。

一面に薔薇の花びらが浮いていた



「長官は外でお待ちください。リリエル様…こちらへ」

リリエルを促し中に入った。

「…ゆっくりと清めてください…終わりましたらお声を…」


ダイヤは一礼してウエスターレンの待つ扉の外に出て行った。

ウエスターレンは何気にダイヤを見ていた…

ダイヤは一言も言わず無言で唇を噛みしめ俯いている…

ウエスターレンも何も言えずダイヤの頭を撫でた。


「…ダイヤ様…」

扉の中からリリエルが呼んだ。


ダイヤは中に入り身支度を手伝った。

着替えが整いすべてが終わった時…ダイヤは涙をためていた。




 

「…ダイヤ様…」


「…今から閣下の元へご案内します…」

目を反らしダイヤは扉を開けた…


薄暗い廊下には揺らめく灯りが灯っていた。

ダイヤの後ろにはリリエルとウエスターレンが

一緒に無言で歩いていた


そして拓けた場所にベルデとイザマーレ族の悪魔が

リリエルの事を待っていた。

いよいよリリエルを引き渡さなければならなかった…


「長官…閣下を必ずお救いし、戻って参ります。

それまで寂しい思いをさせてしまいますが…」

リリエルはウエスターレンに笑顔で伝える。


「リリエル…必ず戻って来い…待ってるから…」

ウエスターレンはリリエルを抱きしめて言った


「ダイヤ様…しばらくの間、お別れです。

これまで閣下に与えていただいた

無償の愛を、決して忘れないでくださいね。

お見送りありがとう…」


リリエルはダイヤを抱きしめて微笑んだ。

震えて固まるダイヤはリリエルを見つめ涙を流していた


「リリエル様こちらへ」

イザマーレ族の1魔が言うとリリエルは頷いて歩き出した



 

「…嫌…リリエル様を…連れて行くな…」

ダイヤが泣きながら怒鳴って言った


「ダイヤ!?」


ウエスターレンは

今にも飛び掛かろうとしているダイヤを押さえつける。







 

ダイヤは怒りで魔力まで最大に溜めていた

「離して!長官!リリエル様が犠牲になることはない!!

生け贄にするなら私にしろ!だから連れて行くな!

いくらでも生け贄になってやるから!」

ウエスターレンの腕の中で暴れ叫び続けていた


「……」


リリエルはダイヤに振り返り、微笑みかけた

そしてイザマーレの待つ部屋へ入っていった

扉が閉められ…やがて扉は消えて行った。


ダイヤは泣きながら崩れ落ちていった


「ダイヤ、リリエルを思うなら、泣くのを堪えろ!

いつものような甘えは許さない。

イザマーレを抑え込めるのはリリエルしかいないんだ

大丈夫だ。リリエルなら、きっとやり遂げる。

あいつらを信じろ。分かったな?」


ウエスターレンの力強い言葉に、ハッとするダイヤ。


「ダイヤちゃん。君が今しなければならないのは

暴れることじゃない。ダンケルをしっかり見守ってくれ。

それが、君の役割でしょ?」


普段穏やかなベルデが、厳しい表情でダイヤを諭す。


「いつか君にも分かるはずだ。

叱られ、厳しい言葉をかけられる事こそが

君への最大級の励ましだった事を…

彼らの一大事に、君が心配の種を増やしてどうするの?

せめて自分の足で立ち上がってごらん。」


「!……」

ダイヤは強い気持ちを胸に立ち上がった……





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