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贅沢な観客


数時間前の事。

天界では、人間界で起きた予想外の出来事に、ミカエルが憤慨していた


老いぼれゼウスが自分の目を盗み、コソコソと企てた事件だったのだ

求心力の衰えたゼウスに従う者など

天界でもほんのひと握りの低級天使どもだけだが、

自我を持つことを許容せず、ただ己に尽くせば良いだけの

悪質なコピーを生み出すだけなら

ゼウスの力さえあれば訳のない事なのだ


「おのれ…クソじじいが!」

怒りに溢れた自身の波動で結界が破損していく


その時、空気の揺れを感じ、振り向いてさらに驚く


「! お前……」


「よお。この場では久しいな。ミカエル」


「おい、こんな所に居る場合じゃねーだろ!何やってんだ!!

すまない、ゼウスの野郎はすぐに俺が締め付けるからっ」

姿を現したイザマーレに、ますます焦るミカエル


「ミカエル、落ち着け。心配はいらない

こんな最中に、わざわざ出向いてやったのは他でもない。

またとない機会だ。お前にも聞かせてやろうと思ってな」


「?」



そこへさらに空気が揺れて、雷神帝と風神帝を引き連れ

ウエスターレンが姿を現した



 

「イザマーレ君。他でもないウエスターレン君の頼みだから

我慢しているが、良いのかね?いつでも力になるから、

遠慮なく言ってくれたまえ」


「雷神殿、申し訳ありません。

あいつも、かつてのウサを晴らしたいだろうと思いまして(笑)

そんなに時間はかけませんので、見守っていただけますか」


ウエスターレンの横で、穏やかな笑顔を浮かべるイザマーレ


ウエスターレンは邪眼を通して、現場の様子を終始見守っていた


「おいおい…怒り狂ったまでは流石だが

もう飽きたのか?仕方のない奴だな♪」


呆れた口調とは裏腹に、八重歯を覗かせて

楽しそうに笑うウエスターレン


「リリエルを怒り続けさせるのは、至難の業だからな(笑)」


イザマーレも笑いを堪えて静かに見守る


「おいおい、大丈夫なのか?」

「やっぱり援護射撃した方が……」


心配で仕方ない雷神帝やミカエルは再び焦り出す


「ふっ(笑)心配は無用ですよ。

確かにあいつに怒りは似合いません。

ですが、この力ならどうかな…?」


不敵な笑みを浮かべ、イザマーレはリリエルに言霊を飛ばす


時空を超えて届いたその声に反応したリリエルが

すぐさま歌い始める



 

「…ほう、これは…💕なかなかの美声だな」


「………」


聴き惚れている雷神たちの横で、

懐かしさに言葉を失い、俯くミカエル


「めったに見ることの無い、あいつの真骨頂♪ご堪能ください。」


一言伝えた後、イザマーレも黙り、

リリエルの紡ぎ出す歌声に酔いしれ、微笑を浮かべる


(……免許皆伝、合格だ。リリエル…)



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