桜が満開となり、うららかな春の陽気に包まれた、ある日の事
リリエルは自分の部屋で、人間界のある家族の様子を眺めていた
「リナ、ひき肉これでいい?」
「あ、うん…ニラってどのくらい入れる?」
「ちょっとでいいんじゃないか?」
「もう、そうやって…パパは野菜嫌いなんだから
ちゃんと食べれば美味しいって、散々ママに言われたでしょ!」
人間界のリリエルの家族が、仲良く手作り餃子を作っていた
珍しく、末っ子のリナが「今日はリナが作るよ!」と言い出して…
せっせとタネを皮に包み、いよいよ焼く時になった
鍋に水を入れて「キャー!火傷しそう!リリ!さっさと蓋!」
ギャーギャー騒ぎながら
それでも何とか綺麗な焼き色の餃子が出来上がる
……
(ふふっ楽しそうに頑張ってるじゃない♪♪
今日はパパの誕生日だもんね……)
静かに微笑みながら、見つめていたリリエル
「リリエル?どうした、何やら楽しそうだな」
シャワー上がりでバスローブ姿のイザマーレが、抱き寄せる
人間界の家族の事を、いつでもリリエルが見ていられるよう
イザマーレが特殊な魔水晶を用意したのは、随分前の事。
イザマーレも一緒に魔水晶を覗き込み、微笑む
「…そうか、今日は旦那の誕生日だったな。
下のお嬢ちゃん、なかなか奮闘してるじゃないか♪
母親のお前は、料理も完璧なのにな」
イザマーレに髪を撫でられ、嬉しそうなリリエル
「餃子か…我々も、よく作ったぞ。曲作り合宿の時なんかに……」
懐かしそうに呟くイザマーレの言葉に、リリエルは目を輝かせる
「うふふっ、閣下。構成員の皆さ魔も一緒に
餃子パーティーしませんか?
家族の様子見てたら、やりたくなっちゃいました(≧∇≦)」
なにも返事していないのに、もうワクワクし始めるリリエル
数日後、
人間界にある屋敷に、全構成員が専用ペット同伴で集結していた
魔界の屋敷より、人間界の屋敷の方が
キッチンも広く、みんなで盛り上がるには適しているだろうと
イザマーレが判断したのだ
「坊ちゃんたちがこちらに来てくださるなんて……
お帰りになる際の衣装は、このランソフにお任せください♪」
嬉しそうに出迎えるランソフ
「そうだな。リリエルに新しい服でも買ってやるか。」
イザマーレは小声でランソフに指示を出していた
「リリエル様、魔界からまた食材を持った人間が来たんだけど
あいつら、何か俺の事睨んでないか……?」
ラドルが、訪れた客人を連れて、焦った口ぶり
餃子パーティーの事を聞きつけた、男性信者が
「是非とも、ご賞味ください♪
閣下、あ…握手……してください(*´艸`*)」
と、ニッコリ微笑みながら、
特製のメキシカン・タコス餃子を持って来てくれたのだ
見かけはプロレスラーの彼。
リリエルに気安く声をかけるラドルには、強烈な視線を浴びせながら
バサラの前ではお花畑を咲かせるお姫様のようになる
(…やれやれ、先が思い遣られるな。だが、餃子もたまには良いな♪)
ウエスターレンが手際よく焼き上げる餃子を嗜みながら、
ビールを飲んでいるイザマーレ
少し離れたところで、ランソフ親子も餃子を食べていた
「うぎゃっ?!…えっ…なんで??」
ラドルが騒ぎ出す。自分に盛り付けられた餃子だけ、
中身がワサビにすり替わっていた
「騒々しいぞ、ラドル。静かに食わんか……」
穏やかに諭すランソフ……
そこへ、ベルデとラァードルが現れた
「餃子だけだと、口寂しいでしょ?
たこ焼き食べたいってラァードルが言うから…たくさん用意したよ。
エマにも手伝ってもらったから」
「へへっ、実はさ、スプネリアも好物なんだよね。たこ焼き」
得意顔になるラァードル。
一名で50個くらいたこ焼きを頬張ってご満悦だ
「…ふう、久しぶりに皆との食事もいいもんだな。
だが…吾輩はこれくらいで、満腹かな……」
少食のイザマーレは、食べるのは早々に辞めて
泡盛に手を出している
「イザマーレ…酔っぱらうなよ」
ウエスターレンが甲斐甲斐しく寄り添う。
「あ!ウエスターレン、ずるいぞ!閣下は酔っぱらうと可愛いんだから!」
バサラとセルダはニコニコしながら、
イザマーレのメショメショタイムを待ち望んでいる
リリエルとスプネリアは少し離れたところで見守りながら
美味しく出来た餃子とたこ焼きを頬張っていた
「あ、美味しい♪鶏ひき肉にレンコンを刻みこんでるのね…
あ、海老も入ってる…今日はダイヤ様、来れなくて残念だったけど…」
人間界の屋敷で行ったパーティーの為、
ダンケルを降臨させるわけにもいかず、
エマに会いたくないダイヤも、喜んで我慢していた
(リリエルが楽しいなら、またやればいい。
今度はあの、丸太小屋でやってもいいよな♪♪)
イザマーレからのテレパシーに、リリエルはにっこり微笑んでいた
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