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魔界の森のお茶会~婚姻の儀~


緑が鬱蒼と生い茂る魔界の文化局


人間界で名誉ある仕事を成し遂げ続けている最高魔軍に

勲章が授与される事となった。

その表彰式で、久しぶりに正装に着飾った構成員たちが一同に集結した。


鐘が鳴る

照魔鏡から大魔王陛下が姿を現す。

構成員は整列。イザマーレは跪き、頭を下げて出迎える。


「この度は我々の活動及び人間界の布教を

お許し頂き誠に有難うございます。

必ずや我々の活動を通し布教に勤めていく所存でございます。」

イザマーレは顔を上げ謝意を述べた。


ダンケルは微笑んでイザマーレに近付いた。

「お前達は私の期待以上の成果を果たし続けている。私にとって最高の宝だ」

「有難いお言葉に感謝します」

イザマーレはダンケルの指先にキスをする。


「…イザマーレ、おいで…」

ダンケルはイザマーレを立たせて抱きしめる


一瞬ウエスターレンから殺気が出たが構わずにダンケルは抱きしめたまま


「お前からウエスターレンを奪うような真似をしてしまい、申し訳なかった。

そして、愛しいお前を痛めつけるような…

許してくれ。決して邪魔はしない。私はお前が泣く姿は見たくない…

私にとってはお前こそ誠の大事な宝。それだけは信じておくれよ…」


ダンケルはイザマーレの肩に手を置き、優しく見つめる。



 

「…いえ。いいえ!決してそのような…

吾輩にとっても、陛下は最も尊い、誇り高き存在なのです!

これからも、陛下の駒として、我が身を……っ」


必死で応じるイザマーレだが、胸が熱くなり、言葉に詰まる

溢れる涙を止めることができない。


「ウエスターレン…イザマーレの横へ…」

ダンケルはウエスターレンをイザマーレの横に立たせた


「イザマーレ、そしてウエスターレン。

お前達は王家公認のカップルとして承認する。

未来永劫、この2魔を引き裂くような事は私が許さん。」

ダンケルが高らかに宣言した


「御意!」

会場の悪魔達が一斉に答えた。


「幸せになるのだぞ…イザマーレ、ウエスターレン」


微笑むダンケルに感謝し、イザマーレもウエスターレンも跪き頭を下げた

涙をこらえ、顔を上げられずにいるイザマーレを

ウエスターレンが抱きしめ、キスをする。

最後には、ウエスターレンに胸に抱かれ、泣きじゃくるイザマーレに

やさしい太陽の光が降り注ぐ……



……


「お疲れ様~」

「ほんっと、最高のステージだったよなあ!」

「悔しいけど、やっぱウエスターレンは流石じゃんね。」


「ところでさ、今日は俺たちの慰労会だからって、

わざわざ陛下が王室の音楽隊を編成したらしいんだけど、

なんであいつまで呼んじゃったんだろう」

首を傾げるラァードル。



 

「人間界でウエスターレンを助けたってことで、勲章まであげちゃったんだろ?」

バサラもやや不満顔。


念入りにキーボードの音チェックをしている男の元に、イザマーレが近づく。


「…なるほど、いい音だ。」


ビックリして振り返った人間。


「あっ!イザマーレさん!!この度はおめでとうございます!!!」

底抜けに明るい声が響く。


「いや~、マジかー。やっべー!本物のイザマーレさんに会えちゃったよ!

……えとっえとっ、あっ 後で、こいつにサイン貰ってもいいですか?!」


「「?!」」


一触即発の修羅場かと、ハラハラと様子を伺っていた構成員が一斉に驚く。


「いや~あ、いつか絶対、こういう日が来ると思ってましたよ!

あの頃からおふたり…あ!ごめんなさいっ御二方は僕の憧れでしたから!」


「…なるほど。お前のその音色なら、

音楽には殊更頑固なアイツが気に入るのも不思議ではないな。

ウエスターレンを救ってくれてありがとう。改めて感謝する。」


「ぃえ?!いやいやいやいや、とんでもない!

俺から無理やりお誘いして、

一度だけの約束で音合わせしてもらっただけなんですよ(汗)」


「その後、しばらくしてから、

ホール前で倒れてるウエスターレンさんをたまたま発見した時には

驚きましたけど。」


(…そうであったか。やはり、ウエスターレンの奴)



 

「それにしても、悪魔の方って夜寝ないんですね!

ビックリですよ!」


「?!」


「たまに、風邪を引いて寝込むことはあったかな?

でも、その度に夢を見るのか、お辛そうでした。

よくうなされてたんですよ。」


(…泣くな、それ以上、もう泣くな…俺は……いつもお前のそばにいるから…………)


……


ダンケル陛下の魔誓の儀式を終え、

今は一つのテーブルに陛下と構成員全員が集まり

楽しく歓談タイムである。


「それでお前達の子を抱けるのはいつになりそうかね?楽しみなんだが...」


突然切り出したダンケルの言葉に、お茶を吹き出す2魔。

だが、明らかに揶揄っていると理解したウエスターレンは、挑戦的に言い返す。

「近い内にお目にかかれるよう努力するよ。」

「ウ、ウエスターレン…!!」


「閣下!僕も質問宜しいでしょうか?前から気になっていたのですが、

普段お2魔でいる時はどうお過ごしなんですか?」

顔を赤らめて止めようとするイザマーレに、さらに追い打ちをかける人間の男。


「そ、それは…」

言い淀み、ウエスターレンをチラッと見ながら、

ついに真っ赤になって何も言えなくなるイザマーレ。


「ウエスターレンさんは、やはりキスとかはお上手なんですか?

するときに誘うのはどち…」

「悪いな。こいつを虐めるのはよしてくれないか?」




 

「! ウエスターレン……」

「こいつを泣かせていいのは、俺だけだからな」

「!!!!」


「…イザマーレ、大丈夫か?悪い、ちょっと部屋で休ませてくる。」


ついに恥ずかしさで限界になったイザマーレを抱き上げて

ウエスターレンが、奥の部屋に連れ出す。


「レン、いっちゃ嫌だ、ちょっとだけ…あの…」

「当たり前だ。ずっとそばにいるから安心しろ。」

ウエスターレンがベッドの端に座り無言で手を握る。


ようやく眠りに落ちたようだ。すやすやと眠るその顔を覗く。

寝顔をこうやってじっくり見たのはいつぶりだろう。

そう思っているとだんだん瞼が重くなってくる。


俺も一緒に寝るか…


そう思いベットに入ろうとしたその時

バァン!!勢いよくドアが開き、見えたのは猫と涙紋様の顔。


「閣下〜平気?…あっ」

「……このやろう閣下を独り占めしやがったなあ!」

しまった…こいつらの存在を忘れていた。


・・・・

「ずるいぞ、ウエスターレンばっかり!

俺らだって閣下とイチャイチャしたい〜!!」

「だから何もしてねーよ。お前らもう帰れ。イザマーレが起きる」

「そんなこと言って独り占めしたいだけだろー!」


「いやだから何もしていないって…寝るのを待っていただけだから」

「俺らに隠れて変なことしようもんなら拷問すっからな~~~!」

「…おい、俺様がお前らにいちいち遠慮なんかするか!」




 

騒々しい声が聞こえる。

イザマーレの意識が段々と浮上してきた。

(んん、何事だ…??)


目を開けると、ウエスターレンとギャーギャーわめき合う

バサラとセルダの姿が目に映った。


「あ!閣下体調はどう?大丈夫?……閣下?」



「…吾輩が寝ている間に楽しそうなことをしていたのか」


「…え(汗)」


「お前ら、ほんとうに仲良しだな。吾輩のことは放置したままで…ふんっ」


「「「そ、それは違う!ぜっっっったいに、違う!!!!!!」」」




Fin.



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                                    出口(蔵書案内に戻ります)

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