聖飢魔Ⅱの蒼き水、麗しのギタリスト
ルーク参謀発生日記念
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2023年4月12日
魔界-
王都の中心に隣接する高級住宅街
水の領主が居を構える邸宅
立ち振る舞いから、華麗なる美を惜しげも無く
振り撒く主は、中央省庁の中でも最難関と呼ばれる
軍事局を纏めあげる長だ。
日課としている早朝ランニングを終えて
軽くストレッチしていると、庭にある池から
ピチョン、と水の撥ねる音がする
タオルで汗を拭きつつ、近寄ってみると
水面に映る文字にカラッとした笑顔を見せる
人間界で活動する際に器としているアイツが
誕生日を迎えたらしい
彼の元には、未だに多くの信者から寄せられるメッセージで溢れかえる
それを自慢したいのか、毎年のようにバサラの元に転送してくるのだ
人間として齢を重ねということは、
悪魔の自分には分からない苦労もあるだろう
日頃、俺のために鍛錬を続けるアイツだけの勲章にすればいいと
何度も伝えてるのに、律儀に転送を繰り返してくる
「だって、今の俺って、全部アンタのお陰というか
アンタが居たからこそだろ?」
………
最高魔軍という地位で、実力も人気も認められているバサラ
だが他の構成員たちと比較して引け目を感じてしまう癖は
器のアイツと一緒。波長が合うからこその本体と器なんだろうけど…
クスッと笑みを浮かべた、その時
「……ん?」
一度消えて、再び浮かび上がってきた文字に目を瞠る
「いよ~お!バサラ。元気か?…って
昨日の演習を見学しに行ったばかりだから
分かりきってるけど(笑)」
「……なにあいつ……毎日一万歩って言ってたけど
昨日はついにあのまま、人間界まで行っちゃったのか💦」
演習場所でいつもの通り、飄々と笑いかけてきた
ラァードルを思い出しながら、そういえば腹減ったな、と
腹を摩るバサラ
(使用魔に頼んで、フレンチトーストでも作ってもらおう…)
踵を返そうとした時、水面に浮かぶ新しい文字
「…!…えっ?」
驚いて見返す
「よお、バサラ。月末は俺様と合同演習だ。
よろしくな。しっかりと戦術を組み立てておけよ🎶」
文字だけで紫煙の香りが漂ってくるような言い回し
「…それは分かってるけど…なんでウエスターレンが人間界から?」
多くの疑問符を消化しきれず困惑するバサラ
すると再び、新たな文字が……
「時間設定して転送するよう頼んでおいたから
上手く届いてるはずだが……発生日、おめでとう。バサラ」
「…!…閣下?!」
字面だけで、魅惑の声が聞こえてきそうな文に
バサラは思わず声を上げる
「現在、人間界において、活動を続けるバサラの器とは
何かと接触の機会があるからな」
「…そうだよなあ…せっかく閣下と一緒に出来るチャンスだったから
俺も行きたかったんだけど…」
(そういうのだけは、頑として譲らないよな、アイツ…💢)
魔界一の愛され悪魔、イザマーレに対する想いは
バサラ同様、器のアイツも一緒なのだ
(ウエスターレンだって…)
今でも月一回のラジオ番組で共演している
だが近頃では器のアイツの我が強く出ているせいか
プライベートな話がなかなかできずにいるのだ
時間は人間時間の数週間前に遡る
人間界では、ラジオ番組で
イザマーレとバサラの名コンビ復活となり
歓喜の渦に沸いていた
本悪魔は知っての通り、魔界に帰還しているため
実際にイザマーレと対峙したのは器の人間だった
その時、イザマーレのほんの思いつきで
時間設定でメッセージを転送するよう器の人間に
依頼した
その後、魔界のお茶会でイザマーレの噂を聞きつけて
ウエスターレンとラァードルも、真似してメッセージを届けたのだ
「…えっ、てゆーか、みんな
そんな自由にあっちと行き来してるの?
チート過ぎない?💦💦」
気が付かず、真面目に魔界にて職務に当たっていたバサラ
「……石川は何もないのかよ」
彼らの心遣いに、ホッコリしながら
誤魔化すように悪態をつくバサラ
「……ぷっ、くくく……」
「(笑)ここまでお膳立てして気が付かないって
どーなのよ」
イザマーレは堪えきれず、吹き出す
その横で呆れながらもにこやかに見つめるセルダ
まぁるい魔水晶に手を翳し、覗き込むベルデは
のんびりとハーブティを飲みながら、傍らで
紫煙を燻らせるウエスターレンを見遣る
「あんまり意地悪しないで、そろそろ
招待状を届けてあげようよ」
「日付が変わるタイミングで、すでに送り付けてある。
お前ならとっくに把握してるだろーよ」
オーラを探知しにくい無色透明の目玉蝙蝠が
バサラの足元で困ったように羽ばたいている
魔界の一日は、人間界の1週間。
バサラの発生日を呪うパーティが開かれるまで
最高魔たちの束の間の休息……
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